- 「住宅ローンは頭金ゼロでもいけると言われたけれど、諸費用はどうすればいいの?」
- 「審査で通帳のコピーを出すように言われたけど、何をチェックされるの?」
本記事では元不動産業実務者としての私の経験から、銀行が通帳の直近3ヶ月〜半年分から何を見ているのか、そしてそれが諸費用ローンの可否にどう影響するのかを解説します。
銀行は通帳のどこを見ているのか
銀行が通帳の提出を求める大きな理由は、確定申告書や決算書だけでは分からないリアルタイムの資金繰りとお金の扱い方を知るためです。
主にチェックされるのは次の3点です。
1:他社借入の返済状況と隠れ延滞
消費者金融やカードローンの返済引き落としが毎月きちんと行われているかどうかを見ます。 残高不足で引き落としが戻っている履歴があると、信用情報に載る前の危険サインとして判断されることがあります。
2:公共料金や税金などの支払い状況
電気・ガス・水道、携帯料金、国民年金や国民健康保険料などの引き落としが滞りなく行われているかを確認します。 ここが遅れがちだと、日常の支払いもギリギリなのではないかと見られ、諸費用ローン(※1)やオーバーローン(※2)に対しては特に慎重になります。
※1:
諸費用ローンとは不動産を購入する際、物件代金以外にかかる費用(登記費用、仲介手数料、火災保険料、ローン事務手数料など)を賄うためのローンです。住宅ローンよりも金利が高めに設定されることが多く、審査も別で行われることが一般的です。
※2:
オーバーローンとは物件の購入価格(または評価額)を上回る金額を借り入れるローンです。諸費用ローンを別で組むよりも金利を低く抑えられるメリットがありますが、売却してもローンが返しきれないというリスクを抱えることにはなります。
3:不自然な「見せ金」
審査の直前にどこから来たかわからない大きな入金があると、貯金があるように見せかけるための「見せ金」ではないかと疑われます。突然増えたお金が実はカードローンや身内からの借金だった場合、住宅ローンの返済が滞るリスクが高まります。銀行はこれを一番嫌がります。
銀行は今いくら持っているかという結果よりも、どうやってそのお金を貯めてきたのかという履歴を重視します。もし大きな入金が親からの援助や保険解約金などであれば、贈与契約書や保険解約返戻金の通知など、資金の出どころをきちんと説明できる資料を用意しておくと安心です。特に自営業の場合は事業用の資金と個人の貯蓄が混ざりやすいため、より厳格にチェックされる傾向があります。
ちなみに、ずっと家で貯めていた現金を入金しただけという言い訳は今の審査では厳しいです。いわゆるタンス預金ですね。客観的な証拠がない限り、見せ金と同じ扱いを受ける可能性が高いので気をつけましょう。
諸費用ローンを希望する自営業者が厳しく見られる理由
自営業者が「諸費用ローン」や「オーバーローン」を希望すると、銀行の審査は会社員以上に一気に厳しくなります。その理由は、単に貯金がないことへの不安だけではありません。
事業の予備費を持っていないと見なされる
自営業者にとって手元の現金は、売上が落ちた際や急な経費を支える防波堤です。諸費用まで全額借りようとする姿勢は、銀行から見れば事業を支える余力がない自転車操業の状態と評価されます。特に、通帳の月末残高が頻繁にゼロ近くまで落ち込んでいるようだと、銀行は少しの不調で即座に返済がパンクすると判断し、審査の目は一気に厳しくなります。
会社員のような安定した給与の保証がない
会社員であれば毎月の給料という担保がありますが、自営業者の収入は常に変動します。自己資金を1〜2割入れられない(=数百万の貯金もない)状態でのフルローンは、少しの体調不良や景気の変動で即座に返済がストップすると判断されるのが現実です。
通帳を提出する前にやっておきたい整理術
自営業者が住宅ローンや諸費用ローンの審査で通帳3ヶ月分を出す前に、最低限やっておきたい整え方があります。
不明な入金・出金の説明を準備しておく
見せ金のセクションでも触れましたが、それ以外にも取引先からの入金やフリマサイトの売上など、ぱっと見て用途が分かりにくい動きは聞かれたときに説明できるようメモを残しておきましょう。 可能であれば、資金の出どころを示す請求書や契約書を手元に揃えておくと銀行担当者への印象が良くなります。
キャッシング・カードローンの整理
通帳に消費者金融からの振込やカードローンの頻繁な利用履歴があると返済負担の重さを疑われます。 もし残高が少ないなら審査前に完済して解約しておく、残る場合でもなぜ利用したのか、そして今は返済計画に無理がないことを説明できるようにしておきましょう。
事業用と生活費用の口座を分け始める
すべてを1冊の通帳で回していると、事業の収支と生活費が混ざり合い、銀行側も実態を読み取りにくくなります。 今からでも事業用口座と生活用口座を分けておくと、お金の管理ができている人として評価されやすくなります。
まとめ:通帳提出は誠実さと管理能力のテスト
貯金が少ないから諸費用ローンに頼る、それ自体が悪いわけではありません。銀行が知りたいのは、あなたに将来にわたって住宅ローンと諸費用ローンを返していけるだけの管理能力と、最低限の余力があるのかどうかです。通帳3ヶ月〜半年分の提出は、単なる事務作業ではなく、あなたの日常のお金の扱い方が丸見えになる誠実さのテストに近いものです。もし今の通帳を第三者に見せるのに不安があるなら、書類を出す前に住宅ローンや自営業者の資金繰りに詳しい専門家に一度チェックしてもらうのも一つの方法です。そのうえで、諸費用をどこまで自己資金で用意し、どこからをローンで賄うのかというラインを一緒に考えてもらうと良いでしょう。
